父を語る その1

 

 

この春、

四月半ば、

日一日と容態が

悪化していく父の枕元で、

ボクは作曲作業に追われていた。

目前に

レコーディングを控え、

半日たりとも

作業を中断できぬスケジュールの中、

父の病室に泊まり込み、

五線紙を持ち込み、

ひたすらに

無数の音符を書き綴っていた。

生前の父は

誰よりもボクの仕事を

いつも気にかけていた。

にも関わらず、

レコーディングの

スケジュールが近づくにつれ、

容態が悪化していく

不条理を嘆きながら、

ボクは作曲を続けた。

ところが、

父の枕元で

作曲している内に、

手塩にかけて育てた

息子の作曲をする姿を見ながら、

父は旅立ちたいのだろう、

と思えてきた。

「父さん、

一生懸命に作曲しているから、

ちゃんと見守っていてね。」

ボクは病床に

臥せる父へ語りかけながら、

さらに筆を走らせた。

次第に呼吸の間隔が

間延びしていく。

微かに病室で響く父の呼吸音に

耳を澄ましながら、

ボクは数々の調べを

真白い五線紙の上で奏でていった。

 

今夜から、

その時に手掛けていた音楽が

NHKスペシャル

「知られざる大英博物館」にて、

21時より

NHK総合チャンネルでオン・エアされる。

 

きっと父は

人生の幕が下りるまで、

息子が書き綴っていた調べを

心の耳で聴いていたと確信している。

 

1人でも多くの方々に、

ボク達親子の

ラスト・セッションを

ご覧頂きたく存じます。

 

訃報

去る4月22日 9時24分。

父・浩一が他界致しました。

享年81歳でした。

約4年間に渡り、

肺癌の治療に励んでおりましたが、

最後は家族に見守られながら力尽き、

安らかに、穏やかに、息を引き取りました。

父が生前お世話になった全ての方々へ、

心より御礼申し上げます。

明日からは

約7日間のレコーディングを控えており、

只今は準備に追われております。

よって改めて、

仕事の方が一段落してから、

父の想い出を

少しずつ綴ってみようと思います。

まずは御報告と御礼まで。

 

父の冥福を一人でも多くの方々に

祈って頂ければ幸いです。

合掌

謹賀新年 2012

あけましておめでとうございます。

今やこのブログも

年始や誕生日のみの更新となり、

もはや自分でも呆れてしまうほどの

管理状態となってしまいました。

が、もしや万が一にも、

ホーム・ページ上でのブログ更新を

心待ちにしていらっしゃる方が

世界の何処かにいらっしゃるのならば、

心からお詫び致します。申し訳ございません。

さて、

昨年の震災を思い起こせば、

戸惑いを感じてしまうほど、

年越しを身に余る幸福に包まれながら迎え、

新年への抱負に胸を躍らせつつ初詣へと出かけました。

すでに家内のブログ上にてご報告させていただきましたが、

昨年末26日に、長女を授かりました。

産後も母子共に健やかな日々を過ごし、

大晦日に無事、退院の運びとなった次第です。

4年間に渡って肺癌の闘病中である父も、

入院先から一時帰宅を許可されるほど回復し、

年末年始は自宅で家族に囲まれながら、

新年を迎えることが叶いました。

長年に渡り仕事上のパートナーである

辣腕女性マネージャーも、

末長い幸せを育むであろう彼との新しい人生をスタートさせました。

重ねて昨年に引き続き今年も、

生き甲斐や手応えを感じる仕事に恵まれております。

という次第で、

2012年を迎えるにあたり、

ボクは身に余る幸福感を家族、

大切なスタッフや友人達と分かち合いながら、

新年を迎えることとあいなりました。

きっと今年も、

自分を支えてくれる人への想いから沸き出でる

愛情、責任感、連帯感、創作意欲が、

ボクを導いてくれることでしょう。

何卒、本年も宜しくお願い申し上げます。

1人でも多くの方々にとって、幸多き一年となりますように。

 

岩代太郎 拝

46年目の抱負

5月1日。

今年も無事に誕生日を迎えることが出来た。

3月の震災を経た今、

一層この幸せを深く感じる。

例年では、

「誕生日は産んでくれた母に感謝する日」

とするパーティーなどを催していたが、

時節柄を考慮し、

こういった集いは一切行わず、

さらには誕生日の

前後約10日間(4/245/4)が

仕事のスケジュールと重なった事情から、

連日連夜に及ぶ

レコーディング・スタジオでの

作業に追われるがまま、

深夜のスタジオで淡々と誕生日を迎えた。

母にも会えず、

甥とも戯れず、

家族とも過ごせず、

友達に囲まれることもなく、

無論、家内との抱擁もなく、

仕事三昧の誕生日となった次第である。

がしかし、

日本中が何となく元気を失っているかのように

見受けられる現状を踏まえれば、

まずはこの時期に

大掛かりな音楽制作に関われる

作曲家としての喜びを

素直に、そして謙虚に噛みしめたい。

因みに

現在レコーディング中の音楽は、

今夏に全国で劇場公開される

アニメーション映画「鋼の錬金術師・嘆きの丘(ミロス)の聖なる星」で

使用するサウンドトラックである。

この作品については、

追って改めての機会に詳しく述べることとするが、

ともあれ、

来月には関西エリアで、

人生初の自作自演によるオーケストラ・コンサートも

予定しており、

改めて46年目の抱負はと問われれば、

ただひたすらに、

目の前の仕事へ真摯に取り組みながら、

様々な仕事を通して、自らの想いを音楽に託し、

その想いが一人でも多くの方の心に

新しい調べと共に届くよう祈るばかりである。

「音楽は心ある所にある」と信じ

46年目の歳月も精一杯生き、

多くの方々と共に謳歌したいと思う。

 

「みなさんに幸あれ」

「母さん、産んでくれてありがとう」

 

あけましておめでとうございます。

年明け早々から都内にてレコーディングに突入しており、

皆様への御挨拶が遅くなりましたる御無礼、

衷心よりお詫び申し上げる次第です。

現在も、昼夜を問わないレコーディング中です。

本日も先ほど、早朝5時頃にようやく帰宅いたしました。

現在レコーディング中の音楽は、

今夏、全国で劇場公開される

映画「真夏のオリオン」のサウンドトラックです。

今週末からは追加録音の為、ロスアンジェルスへと足を運びます。

何はともあれ、

なかなか味わい深い作品として仕上がりつつあります。

是非、一人でも多くの方々にご覧頂きたく存じます。

 

今年も充実した仕事や心躍る出逢いを

満喫できそうな予感に満ちた1年となりそうです。

きっと皆様にもご満足頂ける

岩代太郎作品をお聴き頂けることでしょう。

昨年と同様に御支援ならびに御厚情を賜りますよう、

何卒宜しくお願い申し上げます。